モモ、13日の金曜日

13日の金曜日だった。
2月だというのに珍しく雨が降った。
凍えていた町が急に解け出したようだった。
ただし、モモしてみれば特に災厄が訪れるわけでもなく、14日の土曜日の一日前でしかなかった。
モモは雨だれの音を聞きながら過ごし、日が暮れるころにはそれにも飽きて、ソファの上でひたすらあくびをかみ殺していた。
時を刻む柱時計の音だけがモモの心臓の鼓動に重なった。
午後9時前、父ちゃんを迎えにモモは母ちゃんとともに車で最寄り駅に向かった。
定刻に列車はホームに滑り込んできて、父ちゃんが現れた。
ここまでは普段と何も変わりなかった。
家に戻り、居間のソファでみんなくつろいだ。
モモも再びまどろみのなかにいた。

しばらくすると母ちゃんが台所にたった。
父ちゃんもソファを離れダイニングに向かった。
何かを察知したかのようにモモは身を乗り出した。

父ちゃんも、母ちゃんもなかなか居間に戻ってこない。
遅れを取ったか。
ついにモモもソファから飛び降り台所に向かった。
そして必死に探し回る。

だが、とき既に遅し。
ひとつ残っていた酒饅頭は、半分に分けられ、父ちゃんと母ちゃんの胃袋に収まっていたのだった。

モモのつぶやき

いちどでいいから饅頭を食べてみたい。